ご挨拶・「だからパーティーひらくことにしたの」 by辻井竜一
こんにちは。
短歌サミット実行委員会理事長の辻井竜一です。
おかげ様で大好評をいただいております「辻井竜一のパンク短歌評論」ですが。
さて次はどれをアップしようか、これにしようか、いや、これはまだ未完成だ、
じゃあ、これにして、その次これにしようか、
やはり小出しにしていったほうがいいかな、などと考えているのが
しゃらくさくなりましたので、「第四回」として、
ここで一気に過去のものを全部掲載させていただきます。
どうぞ。
「第四回 辻井竜一のパンク短歌評論@短歌サミットブログ」
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新企画、「辻井竜一のパンク短歌評論」です。
(この「パンク」は、「評論」にかかります。念のため)
今回は、読むと「え?おおー。ああー。はああ…。そうかあ」
といった感じになる歌のご紹介です。
どうぞ。
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○そこの君 お皿を数えるより俺ともっと楽しいことをしないか?(さかいたつろう)
○ネコバスをまだ待っている このごろは雨があんまり好きじゃないけど(ゆず)
○星だって呆れているさだって俺「会いたい」だけしか願ってないから(くまさん)
○ひたすらにやかんを磨く台所淋しくなりたい十月の夜(イマイ)
○地球上ありとあらゆる火を集め奥手な夜を振り向かせたい(晴家 渡)
○事件ですキッスの味を知りました現場は密室ママには秘密(こゆり)
「え?おおー。ああー。はああ…。そうかあ」といった感じに
なりましたでしょうか。
今回、特に注目されるべきは、この歌です。
↓
○事件ですキッスの味を知りました現場は密室ママには秘密(こゆり)
※この歌の作者は、1940年代〜50年代に製作されたアメリカ映画に
登場するファム・ファタールの醸し出す雰囲気にかなりの影響を
受けていると思われます。
赤いインクの万年筆でレシートの裏に小さい文字で
書いたのでしょうね。
恐るべきミステリアスであります。
ニーノ・フランクも裸足で逃げ出すでしょう。
ちなみにこの歌は、
「第一回辻井竜一短歌賞ミステリー部門」の受賞作品と
なっております。
以上。
さあ。
「辻井竜一のパンク短歌評論」、この先も続くのでしょうか。
「勝手なことをするな」と言われればただちに止めますが、
とりあえず今回は勝手にやりました。
「もっとやりなさい」というメッセージの方が多かった場合は、
もう少し本気でやらさせていただきます。
さて。
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ご好評をいただいております(どこで?)「辻井竜一のパンク短歌評論」ですが、
今回は番外編といたしまして、
「禁断の替え歌シリーズ」より、二首ほどご紹介させていただきます。
みなさまご存じの、加藤千恵さん、佐藤真由美さんの歌の、
替え歌です。
※正論は正論としてそれよりも君の意見を聞かせてほしい(加藤千恵)
↓
○新郎は新郎としてそれよりも君の新婦を抱かせてほしい(さかいたつろう)
※この煙草あくまであなたが吸ったのね そのとき口紅つけていたのね (佐藤真由美)
↓
○たまごかけごはんはあなたが食べたのね そのときパンスト被っていたのね(さかいたつろう)
辻井竜一コンダクターの短歌ツアーの際に募集しておりました
「替え歌シリーズ」ですが、このシリーズに関しましては、
「さかいたつろう」の右に出る者はいないようですね。
何度読んでも、
「おい、この作者ちょっと出てこいよ」
という気分になります。
今回、細かい解説は不要でしょう。
特に二首目に関しましては、この歌は、あらゆる批評を拒んでおります。
まさに短歌のブラックボックス。
この歌が教科書に載るようになったら、この国も終わりですね。
すなわち、一国を終焉に導くほどの威力を持っている、
さかいたつろうさんの短歌のご紹介でした。
さあて。
次回はあるのかな。
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「辻井竜一のパンク短歌評論」
○ぐちゃぐちゃに泣いても君は美人だな関係無いこと思ってごめん(くまさん)
↑
NHK「今夜はテレビでケータイ短歌」にて、
ミニドラマ化された短歌です。
さて。
この歌の作者は、漫画「デビルマン」の愛読者であるに
違いありませんね。
「ぐちゃぐちゃに泣いている君」を見て。おそらく、
何故かは知ったことではありませんが、
「シレーヌ、血まみれでも君は美しい」
というカイムのセリフが頭に浮かんだのでしょう。
そしてその直後。
「いや、違う。この子は、泣いてるだけだ。血まみれじゃねえ。
何てことを考えるんだ俺は。ああごめん。君が目の前で泣いているのに、好きな漫画のことなんか考えちゃって、ごめん。ああごめん」
↑
このような思考がなされたのではないでしょうか。
虚構と現実の境い目でもだえ苦しむ作者の心情が描かれています。
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辻井竜一のパンク短歌評論」
今回は、「さかいたつろう」特集をお届けさせていただきましょう。
まずは、下記の二首をご堪能ください。
↓
○七十億分の一人の確立で出会えた課長の毛をむしりたい(さかいたつろう)
○抜け出した奴らが戻るまで俺のはだか踊りをご覧下さい(さかいたつろう)
いかがでしょうか。
「おい、ちょっとこれ書いたやつ、一歩前に出ろよ」と
言いたくなりますね。
突っ込みを入れたくなる歌というのは、良い歌であります。
これ以上、何も語りたくありませんね。
続きまして。
↓
○あたしではダメなんですか 試してもみないでダメってわかるんですか(さかいたつろう)
○桜の木 お願いだから咲かないでまだセンパイをつれてかないで(さかいたつろう)
上記の2首は、連作「マナーモード」よりの抜粋でございます。
「マナーモード」という単語が含まれる歌から始まり、
最後の歌にも「マナーモード」という単語が含まれています。
しかし、そんな作者の意向など、僕の知ったことではありませんので、
勝手に抜粋させていただきました。
さあ、いかがでしょうか。
「課長の毛をむしりたい」だの「はだか踊りをご覧下さい」だの
言っていたその口で、よくもまあ「桜の木 お願いだから咲かないで」などと言えるものですね。
○桜の木 お願いだから咲かないでまだセンパイをつれてかないで(さかいたつろう)
うーん。
この歌が、女子高生の書いたものであるという認識のもとで読めば。
ああ。いいねえ。切ない感じがよく出てるねえ。
卒業シーズンにぴったりだねえ。
とか思うのでしょうが。
残念ながら、作者は奈良県磯城郡在住の26歳男性です。
しかも、
2008年3月21日
集英社 The 読書 かとちえの短歌デイズにて
第一期最優秀作品賞を受賞。
という経歴を持っております。
……。
世の中、どうなっちまってんだ……。
評論もたけなわではございますが、これ以上さかいたつろうの歌に
触れるのにちょっと疲れましたので、
ここでおひらきにさせていただきます。
次回のさかいたつろう特集まで、ごきげんよう。
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「辻井竜一のパンク短歌評論」
○さよならに今夜うかがいます指輪返しに行きます雪女です(こゆり)
「メールでこの一文が送られてきたらドキドキするか否か」
これは、「辻井竜一のお気に入り短歌」になるか否かの(なりたくないかも知れませんが)
判断基準として、かなりのウェイトをしめております。
まあ、気が付いたのは最近ですが。
無論、とても大切な用件は、
「さよならに今夜うかがいます指輪返しに行きます」
という部分なのですが。
「雪女です」が最後についていることによって、読んだ側の頭はふらふらに
なります。
はっきり言って、読んでしまった時点で、もう勝ち目はありません。
作中主体の、
「これ、もしかして冗談なのかも、とかちょっと思ったりして
混乱して、せいぜいあたしが本当にそこに行くまでリアクションの作り笑いが
ひきつらないように鏡の前で練習でもしてなさいよ。ふふふ」といった
ささやきが聞こえてきそうですね。
まったく、とんでもない女の子です。「雪女」どころではありません。
「つらら女」です。つらら。つらららららら。
しかし、何故かこういった何かしら謎をかけてくるような女の子に
惹かれてしまう哀れな男性がこの世には多いようでして、無事に
指輪を返し終わったら、その足で僕のところに来てこの寂しさを凍らせて
お持ち帰りいただき、翌朝山形にでも一人旅に出ていただきたいものだと、
このように考えております。
ご清聴、ありがとうございました。
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